母娘、夏の欧州旅行記(1)

― 独逸篇 ―







die Autobahn


12時間のフライトを経て、飛行機はフランクフルト空港に降り立った。
機体の窓から外を覗く。
をを、ヨーロッパの大地!
立ち並ぶ赤いパイロンにわたしははしゃいだ。
「ヨーロッパのパイロンだ! ヨーロッパイロン!ヨーロッパイロン!
隣で母は嘆いた。
「ええ年してくだらないっ……」。

12時間ぶりに地に足をつけたわたしたちはツアー添乗員の引率で入国審査へ。
ずらっと並ぶ恰幅のよい審査官を見て、母は騒いだ。
うわあ! ハゲばっかりやっ!
ヨーロッパイロンに勝るとも劣らぬくだらない感想で、母娘の欧州旅行は幕を開けた。

******

ヨーロッパ……それは、母の積年の憧れであった。
勿論今時ヨーロッパ旅行なんぞ、ちょっとお金と時間さえあればまったく夢ではなかろうが、以前にも書いたように、諸事情あって、海外旅行どころか国内旅行すらままならぬ日々が続いていたのである。
だがそんな長い日々も一段落し、前年のソウル行きで調子付いた母娘は、今夏こそは! というわけでドイツ・スイス・フランス一週間旅行を申し込んだ。

海外旅行などすっかり珍しくなくなったこの21世紀であるが、母の渡航前の心構えは、天正遣欧少年使節並みだった。いや、少年使節の心構えなんてよく知らんけど……。独自にドイツ語辞書のようなものを作るわ(だが実際はドイツで母はドイツ語をほぼ使わなかった…)、「チップの渡し方」「買い物の仕方」などがびっしり書かれたメモを作成するわ、ひとり「遠足のしおり」状態である。


母製・遠足のしおり

母のメモ


一方のわたしも、飛行機が落ちたときに備え身辺整理をして昔のポエムを捨てるなどしていた……。もはや旅行準備なのか何なのか分か らない。


関空でツアーメンバーと顔合わせ。ツアーは約25人ほど。今回は、母の希望でパックツアーになったのだった。時折自由時間があるものの、ほぼ完全パックツアーである。小学校の一クラスほどの人数が、旗持ってる添乗員さんの後を人々がぞろぞろとついていく、アレである。集団行動が苦手なわたしはあの形態は避けたかったのだが、どうなることやら。

乗り継ぎ地の上海で既にはしゃぎすぎ、読めもしない中国語の本を買い込み、その後の長いフライトで飛行機酔いしつつも、機内食が中華風からドイツっぽいソーセージに変わったことで、目的地に到着しつつあることを知る。




■ おとぎの国、ローテンブルク

入国審査を終えると、もうそこに観光バスが待っている。ポーターがトランクを運んでくれて、バスに乗り込む。ドイツだけあってベンツ。
パックツアー、自分であれこれと苦労する楽しみはないが、馴れない異国で至れり尽くせりなので、たしかに快適ではある。
バスの運転手さんは、寡黙ででっぷりとした、絵に描いたようなドイツのおじさんであった。

ベンツはアウトバーンを走り始める。
つい10数時間前まで馴れた京都の風景の中にいたはずが、窓の外はモウ(当然ながら)異国の光景で、不思議やねえ、と言い合う。
麦畑、一面黄色のひまわり畑、ガードに沿って延々続く落書き。ひろびろと広がる草地が途切れたところに、小さな集落が点在する。どの町にも教会の塔がそびえ、赤いお屋根のおうちが並び、絵本で見るヨーロッパの光景そのままだー。



途中、SAで休憩。ヨーロッパ初SAだ〜!! SA大好き人間のわたしがはしゃがないわけはない。
ユニークな建築の有料トイレ(50cent)。トイレの外では美術展をやっていたり、いろいろと個性的な工夫をしていた。
ここで、ドイツ初お買い物。
【お買い物】
o かわいい動物の写真集(5.9ユーロ)
o ミントチョコ(1.9ユーロ)
o schwipschwap(1ユーロ)



ミントチョコはわたしの好物。あんま日本ではいいのが売られてないので、以前、妹が米国に行った際も、土産にミントチョコを頼んだのだが、口に入れた瞬間、米国に僅かでも食に関する期待をしたことを激しく後悔した……。ドイツのミントチョコはふつうに美味でした。
schwipschwapというのはオレンジジュースとコーラを混ぜたみたいなもの。ツアーの人からはゲテモノ扱いされていたが別にふつうの炭酸飲料であった。


昼前、ローテンブルクに到着。
「ロマンティック街道の宝石」と呼ばれる、古い街並みをそのまま残した、小さなかわいい街である。


街の入口



添乗員さんに連れられ、街を見学する。
ローテンブルクは観光都市であるので、お店がたくさん並んでいるのだが、その看板がどれも凝っていてすごくかわいい! 肉屋さんにはぶたさんの形の看板。パン屋さんにはプレッツェルの形の看板。歯医者さんには歯の形のドアノブ!など。






どの家々にも窓に植物が飾られ、町中にお花があふれている。
城砦跡は見晴らしのよい公園になっていて、古い石造りがそのまま残されている。
電柱や電線も無い。同じ観光都市ながら、わが京都には、このような古い町並みを完璧に残そうとする意欲はあまり無い。





定時になったので、街の中央の広場へ。
この広場には、古い造りの市庁舎とからくり時計がある。
この街は、三十年戦争の際に焼き払われそうになったところを、市長が3リットルのワインを一気飲みすることで街を守った、という伝説を持っており、その伝説がからくり時計になっているのである。
定時になると広場には観光客が集い、そのアルハラ時計を観賞。市長らしき人物がぐびぐびジョッキを傾けておった。

広場の噴水には、お犬が座ってたのだけど、この犬、ちょっと、うちのまめ子似であった!
「ドイツのまめ子だ!!」とはしゃいで写真を撮りまくったが、今見るとたいして似てない……。
他にもこの街では、たくさんの犬にお目にかかった。大きい犬、小さい犬、日本ではあまりお目にかからない犬種など。
これは、今回巡った街に共通する印象であるが、どこも犬と自転車に優しい都市であった。これも、京都市との相違点である。(京都市の自転車行政は最悪。門川市長にメールを書いたが改善されない。)

まめ子ぽい犬


もふもふ犬



ぞろぞろと市街を観光したあと、自由行動時間となる。
「可愛い街で可愛い雑貨などのショッピングを楽しんでくださいね!」
と言われ、われわれが可愛く繰り出した先は、……

晒し台

「中世犯罪博物館」であった……!

有名な、アイアン・メイデン!

鉄の処女


写真を見ていただければお分かりの通り、中世の刑具・拷問器具を展示する博物館である。
鉄扉を開けると「コンニチハ!」と日本語で迎えられ、展示にも日本語の解説があるところを見ると、日本人客が多いようだ。
建物は、実際になにかまがまがしいことが行なわれていたであろう石造りの塔。館内はひやりと薄暗い。
そこに、おぞましい、或いはとんちきな、拷問器具の数々が並んでいる様子は圧巻。


見ただけでだいたい用途が想像される椅子。
こわいよう。

とげとげ椅子


各種拷問器具。有名な「苦痛の洋梨」など。
うわー!!

各種器具


これは辱め刑用のマスクだが、どう見ても鼻めがね。
ロフトあたりのパーティーグッズコーナーで売られてそう。

鼻眼鏡?


これも恥辱刑用の帽子。
……だが今となっては何が恥辱なのか分からない単なるエクステ。

みつあみ


中学生くらいの子たちがえらく盛り上がりながら展示を見ていたのだが、その中の一人が、アイアンメイデンTシャツを着ていて笑った。狙ったのか、単なるロック好き少年か。

実は、この博物館の目玉は、キワモノ展示だけでなく法律資料の充実らしい。地下にはたくさん蔵書があったが、時間がなくてゆっくり解読はできず残念。ドクロや女神の図柄の蔵書票もかっこよかった。
この博物館については、ブログにも書きました。:http://yaplog.jp/maternise/archive/352

資料


皆が可愛いおとぎの町を散策している間、何故にわれわれはこんなところに……? という気分に次第に陥り始めたので退出。
外へ出ると、別世界のように可愛い町である。お花畑のパラソルの下にバイオリン弾き。大道芸人のお兄さんを囲む観光客。
だがこののどかな街も中世の暗部を潜めているのだなあ、と思いながら、散策。


かわいい雑貨や珍しいものを売るお店がたくさん。

ウインドウ


クリスマスショップ。一年中クリスマスグッズを売っているお店。

クリスマスショップ



はしゃぐ俺。

路上



薬局兼小物屋のようなお店でお買い物。ドイツ語がちょっとだけ通じてうれしい。

【お買い物】
o 友人への土産の豚の置物(3ユーロ)
o 生理用ナプキン(2.19ユーロ)
o カラフルなピアス(3.9ユーロ)
o 赤ストライプにドクロ柄のペーパーナプキン(0.9ユーロ)

買い物


この生理用ナプキンのパッケージはなかなかお洒落ではありませんか。
生理用ナプキン集めは、まあライフワークみたいなもので、今回も各国でそれぞれのナプキンを買おうと決めてきたんである…。また「生理用品ミシュラン」にupしますわ。


自由行動タイムののち、お昼ごはん。
ドイツらしく、メインはソーセージ。だがそれよりも付け合せのマッシュポテトが美味い〜!!
同じテーブルに座ったのは、若い女の子たちで、みんな小食であった。
わたしだけが「うまー! うまー!」と騒ぎ、ひとりで何度もおかわりする。


昼食


隣のテーブルのおばちゃんは、さっき買ったばかりの指輪を皆に見せびらかしていた。
「ほんまは○○ユーロやったけど、値切ったってん! 他のも買うたやんかって言うたら安うしてくれたわ!」
関西人は世界中どこでも、値切る。そして、値切ったことを自慢する。





■ フュッセン


引き続き、バスでロマンチック街道を下る。
アウトバーン沿いには、広大な原っぱの合間に小さな街が点在する光景が続く。
牛のような白いものや、脚の長い犬や、マクドナルドが通り過ぎてゆく。
ある街では「こども祭り」が開催中で、民族衣装の少年の姿を見ることができた。

夕方――といってもまだずいぶん明るい――フュッセンに着く。今日はこの田舎町に宿泊するよ。ホテルというより、個人経営のこじんまりとした宿である。
http://hotelflora.com/


廊下にはなぜかこういう、
コミカルエロティックアートみたいのが、各所に飾ってある。

絵

絵

母:「よかったやん! あんたにぴったりのホテルやな」。
どんな娘だ。


ラッキーなことに長期滞在者用のお部屋に当たったらしく、ちっちゃなキッチンやコテージがついている。なんと素敵なお部屋。こんな お部屋に一泊だけなんて勿体ない! ひと夏いたいよ。
「うちらってセレブじゃない!?」
コテージから広がる景色をデッキチェアに脚を組んで眺める、など地味なセレブごっこを楽しんだのち食堂へ。

夕食は、魚と大量のいもであった。またいもだ! 日本の米の感覚なのであろう。とどめにアップルパイ(甘い)。美味しいのだが、食べきれる量ではない。
これだけでも満腹なのだけど、せっかくドイツに来たんだからとビールを頼む。白ビール・3ユーロ。安い。ジュースやお水と同じ値段で飲めるんである。種類も色々ある。


ビール


パイ


ここでは、同じツアーの参加者夫婦と同席であった。旦那さんが定年退職になったので旅行に来られたとのこと。ツアー参加者は、定年を迎えた夫+妻という熟年夫婦が多かった。あとは、女友達同士や、われわれのように母娘での参加がちらほら。
母と奥さんは早速、「娘さん、ご結婚とか決まってはるの?」「いえいえ、ぜんぜん」「うちの娘ももうじき30なんやけど全然……」「今の若い人はなかなか結婚せえへんからね」「娘は彼氏がころころ変わるの……そのたび服装が変わるから古い服が勿体のうて」と盛り上がり始める。わざわざドイツでする話では無い!
おばちゃん同士はどこへ行っても出会った瞬間から、「子の結婚」と「老人の介護」の話題で盛り上がれるのであろうか。


旨いので調子に乗ってごくごく飲んだがそもそも下戸であるので酔いざましに、食後、ホテル周辺散歩に繰り出す。
20時を過ぎているがまだまだ明るく、周囲は大きな道路もないしお店もないし、ただただ静か。
どのおうちも、広いお庭を思いおもいのお花で飾っている。

庭


庭


人懐こいでぶねこに出会う。かわいい。すり寄ってきたのでおなかをなでなですると、たるんたるんであった。ドイツの人々は概して、四角く肥えて尻がきゅっと上がった独特の体型をしていたけれど、ねこちゃんまで太っているとは。

猫



民家の切れ目から、聳え立つ青い山が近く眺められる。日差しはようやく落ち着き始めて、薄ピンクに染まりつつある空の下、街はしんと静か。「こんなところに来れるなんて夢みたいやわ……」と母。山を背景に母の写真を撮ると、母は帽子を片手に振ってはしゃぐ。ああ、こんなに喜んでくれるなら来てよかった……。
空気はきれいで、われわれの日常の慌しさがうそのようだ。

……と清々しい気分になったそのときに……!

「ひえぇぇぇぇ!!」
と母が叫んだ。
「?」と、指差された足元に目をやると……、

きょ、巨ナメ……っ!!

巨ナメ


そう。そこには巨大なナメクジが!
ヤマナメクジであろう、10cmほどはあろうかというでかさである(上の写真の靴との比較をご覧あれ)。日本ではなかなかお目にかから ないサイズだ。実は、わたしはナメクジが超・ニガテなのである。
よく見ると、近くに巣があるらしく、足元一帯がナメの大群である!
ひえぇぇぇぇ。泣きそーになりながらホテルへ引き返すわれわれであった。


平和だったころのわたしたち。

母と山



22時頃、やっと日が暮れた。部屋からコテージに出ると、満点の星空であった。
周囲には明かりもないし、空気が澄んでいるから、なんと美しく見える。
母を呼んで、きれいやねえ、感動するねえ、としばし眺め入る。
部屋に入り、ドイツのテレビ番組はどんなんかいなとチャンネル回すと、アダルティな深夜番組をやっていた。半裸の女性が出会い系サイトの紹介をしておりかなりきわどい映像が流れるのだが、イイところで、「ここから先は●●ユーロ払ってサイトを見てね」と切れてしまう。エロサイトの宣伝法は、いずこも似たようなものであると分かった。

深夜番組






■ 独身機械は城を作る


翌朝は、教会の鐘で目を覚ました。
コテージに出ると、鐘の音が響く町には薄く朝靄がかかり、その中を赤い列車が走り出てくる。
なんとか清々しい目覚め。
やがて靄は徐々に晴れ、空が青くなる。今日も晴れだ。

朝

朝


朝食はまたホテルの食堂で。ハムや穴あきチーズ、シリアル、など、いかにもエウロパの朝食。牧場から飛んでくるハエがうるさいが。

朝食

ハエ




本日の目的地は、ノイシュヴァンシュタイン城である。
ノイシュヴァンシュタイン城は、ご存知、狂王・ルートヴィヒII世の建てた城だ。
ディズニーランドのお城のモデルとなったことでも有名なのだけど、お城にまつわる話は、ディズニー的なイメージに反して陰惨である。
悲劇の王様・ルートヴィヒII世は、お城の庭で未だ原因不明の死を遂げている。おそらく暗殺されたらしい。
病跡学のひとたちが大好きな彼の人生はといえば、若い頃は美男子であったが生涯独身を通し、日々部屋に籠もって城の設計図を描きつづけ、夜になると馬で峠を走り回るなどの奇行―― を聞いて母、

「典型的なひきこもりの子の生活パタンやな。昼は部屋でテレビゲーム、夜はコンビニに繰り出すんかあ」。
たしかにな。


「ノイシュヴァンシュタイン」という名は、この城がシュヴァンガウの地に建つことから名付けられた。
「シュヴァン」はスワン、白鳥の意。
フュッセンから少しバスで走ると、もうシュヴァンガウに到着。

なぜかカタカナ。

シュヴァンガウ



城見学は予約制で、予約時間に1分でも遅れると中に入れないのだという。桂離宮以上の厳格さや。いかにもドイツって感じ、とぼやく添乗員さん。
しかし、城に入る前に、城の近くの「マイセン橋」へ向かう。その吊橋からは、城がとても美しく見えるのだという。
橋まではけっこうな山道。途中で脱落する年配の人もちらほらおり、途中またも巨ナメに遭遇して心が折れかけるが、思えば今年の元旦は、「しんどいこと好き」の父に連れられて険しい山のてっぺんにある神社まで初詣したのだった…。あのとき、わたしと母は「なんで正月からこんなしんどいことを」とさんざんぼやいたのだったが、あれはこれのためのトレーニングだったのか……見よ! 一年の計は元旦にあったわれわれの脚力を! ……と思いながらなんとか橋にたどりつくと! おお、鋭利に澄んだ渓谷の向こうに、お城が聳えている風景は、まるで絵本の挿絵のよう!

城


城の後ろには、湖がきらきらと広がっている。
うわー! がんばって登ってよかった! と騒ぐ一同に、「綺麗でしょう? この風景をお見せしたかったんです」と添乗員さん。
一同、城を背景に写真を撮りあうなどする。熟年夫婦にシャッターを押してくれと頼まれ、カメラを構えると、夫婦は肩を組みラヴラヴなポーズ。「あら、ええねえ」とからかう母に照れるでもなく、頬を寄せ合うご夫婦。このお二人は終始ラヴラヴなオーラを発していた。

そしていよいよ、城へ向かう。

城標識。

城標識


場内は撮影禁止なので、城壁をば。

城壁


城消火隊。

消火隊


お城の中は、壁や柱や家具の細部にまできらびやかな装飾が施されており、嘆息。
広間は、四方の壁に極彩色の壁画、落ちてきそうな金色のシャンデリアの下には、円形に描き込まれた動物たちが踊っているみたい。天井や柱の空いた部分には、空白恐怖症のように文様が施されている。
廊下の窓からは、湖と山が広がる景色を一望できる。今は初夏で一面青と緑だが、秋も、冬も、春もさぞ美しい眺めであろう。この眺望をひとりじめしていたのか。権力ですなあ。ルII世のお父さんのお城、ホーエンシュタイン城も見える。こちらも遊園地のお城のようでかわいらしい。ルII世は、子供の頃は此処を居城にしていたらしい。
寝室は、夢の☆天蓋ベッドである――「金持ちになったら天蓋ベッドで寝る」というのがわたしの夢であったが天蓋の上に埃が溜まることに気づいてから夢はしぼんだ――。天蓋から垂れるカーテンや、椅子の背もたれには、凝った白鳥の模様が刺繍されている。シュヴァンにちなんで、城のいたるところで白鳥がモチーフとなっているのである。ベッドの横には立派な白鳥型の陶器があったので、

「すごーい、おまるまで立派やわー!」
と感心していたところ、花器であることが判明…。

最も笑ったのは、廊下の一部が人工鍾乳洞になっていたこと。完全に遊園地、いや、秘宝館の発想やん! ひきこもってこんなもんの設計図書いてたとか……ヒキヲタ最高である。

【売店でお買い物】
o 日本語版パンフレット(6ユーロ)
o お城の写真入り栞(0.6ユーロ)
(栞は、春夏秋冬の光景それぞれのヴァージョンを買ってお土産に。)


そして、心ゆくまで見学を終えお土産も買ったしさあ城を出よう、というときに、母娘、まさかの迷子に。
流石お城の中は迷路のようで、出口にたどりつけないっ。
集合時間は五分後に迫っている。母、異様に焦り出し、むやみに走り始める。
実は以前、国内バスツアーに行った際、集合時間に遅れてバスガイドさんに叱られたことが母のトラウマになっているのである…。
母は、そのへんにいる観光客とおぼしき黒人の少女を捕まえ、
「すいませんっ、出口ってどこか分からはります?」 (関西弁)

母よ、さすがにそれは可能性が低かろう…。



結局、アウスガング!アウスガング!とわめいていたら親切な人が教えてくれて無事に城を脱出することができた。ルII世の怨念に捕らえられたのかと思うたよ。
お城の近くのレストランで昼食である。マウルタッシェンという餃子のようなものを食べる。そしてやはり、いも。このヨーロッパ旅行の間に、体組織の大部分がいも化されたような気がする。
ここではにぎやかな若者二人と同席し、彼女らがきゃあきゃあと写真を撮りあう様子をほほえましく見る。「友だち同士もいいですねー」「親子で旅行っていうのもすてきですよ!」などと言い合う。それにしても、ツアーは総勢2、30名、こうして喋りはするが互いに名前を名乗りあうこともないし、普段何をしているのかもどういう人なのかも尋ねあうことがないという、不思議な関係だ。


ワインに見えるが、すぐりジュース。
母はこれを何度も頼んだ。

すぐりジュース


お店にはルII世の肖像画が。
オトコマエで有名だったらしい(年とってからの劣化も有名)。

肖像画


馬車の通る道をくだって、お城を去る。

馬


路傍にはナゾのステッカー

なぞのステッカー



さて、城を去ったわれわれは、バスに乗り込みスイスへ向かうのである。
ドイツとは一泊でお別れだが、訪れた街はみな素敵でお宿も快適であった。機会があればまたゆっくり訪れたいと思う。
今回は田舎街ばかりであったが、都市部にも行ってみたい。

バスはアウトバーンへ。一瞬、オーストリアを通過し、SAで休憩する。県境を越えるようにあっさりと国境を通過するのって、やはり不思議な感覚だ。
ここのSAは、バイク乗りや車好きのための改造グッズがたくさんあった。虎やドラゴンやドクロの図柄があしらわれている。ヤンキー文 化はいずこも同じものを好むのか。

【お買い物】
o 「犬がいます」プレート数枚(2.4ユーロ)
o バナナ煙草とミント煙草(各3.5ユーロ)
o ドクロ柄のカー用品(2ユーロ)
o 雑誌『popcorn』(5.95ユーロ)


「犬がいます」プレートは、ドイツ語のデザインがお洒落だったのでお土産用に。煙草もパッケージが綺麗だ。
ドイツはちょっとしたもののデザインがすごく可愛いと思う。ドイツ語の字体のせいだろうか。交通標識も、どれも可愛かった。標識マニアのわたしは興奮して、走るバスの窓から必死で写真を撮った。

バス内で、買うた雑誌をぱらぱら読む。

雑誌


『popcorn』は、ちょっぴりとがったティーンのための雑誌、といった感じだろうか。日本でいうと、「KERA」的なファッションと、「ポップティーン」的なメンタリティがミックスされた感じかしら。パンクやゴスっぽいファッション頁に、芸能記事やゴシップがプラスされている。オマケとして、しょぼい革(もちろん明らかなフェイク)のリストバンドがついてた。こういうのも日本のティーンの雑誌と同様でおもろい。「visual-kai」(ヴィジュアル系)という言葉がふつうに使われていたりして、ヘーと思った。
読者の悩み相談頁もある。ちゃんとは分からないが、なんとなく分かる。普段目にするドイツ語(ライヒとかフロイトとか!)と語彙がかぶっているため、なんとなく分かる。恋愛や性の悩みが主のようだ。「ボーイフレンドに彼氏がいるみたいなんだけどどうしよう」とか。





瑞西篇へ進む





back