東京








「こやの、こやの」と呟いている。こやのという友達の家に泊まりにいく予定。そういえばちょっと前にKちゃんが自分のブログで、小谷野氏のことを書いてなかったか、と思い出し、ネットにつないでKちゃんのブログを読むと、Kちゃんは、昨今世間をにぎわせている日本の言論界における論争をばっさり斬っていた。Kちゃん曰く、「しかし、宮台真司といい、官田官三郎といい、官立大学派の論者はどうも不毛の感がぬぐえない」とのことでなかなか手厳しい。最近は、官立大学派という立場が流行っているようで、つまり、来たるべき日本の終末に当たって、官僚のポストを官立大学出身者のみで埋めるべきである、とする立場に立つ人たちのことである。官田氏はかなりの保守派で、大真面目にそんなことを主張してる。対して宮台氏は、「あえて」その立場を取っているらしい。が、それを踏まえたうえでも、最近のその議論はあまりに不毛である、とKちゃんは言うのだ。
天気予報を見ると、東京近郊で飛行機事故が起きたとのこと。飛行機が大破しながら落下しつつある映像。ああ、墜落してしまう! しかもその飛行機は上空から「妄想電波」を振りまいており、東京都民の4人に1人が、現在それにやられているという。妄想電波って何だろうか報道はそこんとこ詳しく教えてくれない。が、名称からして、それを浴びると妄想を抱くようになるに違いない、大変なことだ。真っ暗になった東京の空、その下に飛散する塵芥、逃げまどうひとびと。そうだ、あたしが東京に行く予定を立てたから、こんな災難が起きてしまったんではないか。どうしよう。まあでも自分は免れたわけだからラッキー。いやいやしかし、東京の友達は大丈夫か。頭のよい人たちが妄想電波にやられたら日本の言論界はますますどうなってゆくだろう? 急いで、東京に住むミミヲにFAXを送る。超小型のFAXなんて選んでしまったから、名刺大の紙じゃなきゃ遅れない。「東京地獄大丈夫ですか」と書いたつもりが、「地獄」という字を間違えて「東京自獄大丈夫ですか」と書いてしもうた。仕方ない、時間がない、そのまま送ろうとすると、それを見て父が、「うん?なんて書いてある?『東京自殺大丈夫ですか』って?」と訊いた。あたしは間違いに気付いて、半分ほどFAX機に食われてた用紙を慌てて引きずり出し、「自」を「地」に訂正する。「自殺じゃない、自殺じゃない、地獄って書いたの!」。ところが父ときたら、「自と地は間違えやすいからなー、おれの友達もさあ…」などとのんびり話し出す。日本文学って?日本文学って? 天気予報を見ると明日も雨だ。困った。父は遺跡の話をしてる。

(200407)










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