麻原彰晃『生死を超える 増補改訂版』





オウム出版、1992.5(初版は1986.12)


(2002.11に記した感想↓)

ヨーガなどの修行を通して超人化し、「絶対幸福」に至る過程を説いた本。かの有名な「空中浮揚」写真が載っているのもこの本。信者の手記やインタビューを読むと、「この本を読んで入信した」という人が大変多い。

さて、事件当時頻繁に言われた「オウムに偏差値エリートが多いのは、受験勉強によって人格の健全な育成を妨げられたから」みたいな説は一理あってもやはり短絡的である、と言いたい。が、「受験勉強」とオウムの「修行」には相似関係がある。(といっても、私は「受験勉強」はしたことあるが「修行」はしたことないので、書籍や報道を通して知ったかぎりの印象であるが。)

この本は、受験参考書によく似ている、という印象をもった。
ヨーガの教本+信者の体験談(「修行をやったのでこんな神秘体験をしました」)という構成も、「赤本」などの問題集+合格体験記みたいだ。「四ヶ月楽々クンダリニー覚醒法」なんてのも、「英文法30日完成(一ヶ月で偏差値を10上げる!)」とかいうやつみたいではないか。ヨーガの進歩は「超能力」を目安として測られる、とか、グルへの帰依度の上がった信者は知能テストの成績も上がったとか、修行の成果が偏差値の如くちゃんと数字などの可視的な形で示されるのも、受験勉強ぽい。
また、ある信者は「尊師の説法」を、「そこには、すべてのことを秩序立てて考え、理解する『仏教理論』の素晴らしさがありました。今までわたしが目にしてきた矛盾だらけの哲学とは大きく違う『仏教理論』が大変新鮮に感じられたのです」と評価している。確かに、この本の中でも、一見雑多な概念がスッキリと図式化され、整然と整理して説明されている。(たとえば六つのチャクラの固着と六つの来世を対応させて説明しているくだりなど、分かりやすい、というか「おお、そうだったのか!」という気持ちにさせられやすい。)で、それは、受験生のときに、分かりやすくまとめられた参考書を見つけたときのカンドウに、とても似ている。或いは、入試用に要点をまとめられた予備校の講義を聴いて、「そーか、そーいうことだったのか! 学校の授業では分からなかったけど!」とかいう感じ。予備校講師としてのグル。
そして、「受験勉強」と「修行」の共通点は、私にとってはやはりそのダイエット性、というか。


(再読しての感想↓ :後ほどup)








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